持病と陰茎形成1

約3年ほど前、僕が個別面談間接カウンセリングで日本へ行った際にご縁を頂いたTさん。
その時から、あるご相談を承り、日本とタイで離れながらも、性別適合手術を行うタイの病院の先生方との、代理カウンセリングを行ってきました。

代理カウンセリンングを行いながらも、今回Tさんが渡航してきた理由は、持病を抱えた身で、どうしても陰茎形成を諦めきれない気持ちがあり、その気持ちに踏ん切りをつける意味も含めて、直接医師の先生方にあって、直接の声を聞きたいという思いで、渡航されました。
もう一つの理由は、Tさんは約7年前に、某医療機関でミニペニス形成を受けていました。しかし、形成されたミニペニスは下向きで、立っての排尿は明らかに叶わない形状で、且つ、膣も完全に閉じきられておらず、未だに体液が染み出してくるという不本意な状態も抱えており、陰茎形成が無理だったとしても、その修正に期待を寄せる面もあったからです。

Tさんが抱える持病とは、強皮症。
末梢循環障害と言われる、手指の血行障害を抱えています。
長年この病気を患い、症状を緩和するために、ステロイド系の薬の服用も余儀なくされ、代理カウンセリングを担ってきた時から、医師の先生方に、血行障害とこの薬の服用を懸念されてきていました。

14日午後に到着したTさん。
翌日朝から、まず本命だった、ヤンヒー病院のスキット先生を訪ねました。
今まで、お預かりさせて頂いた、健康診断結果、日本の強皮症の主治医の先生から頂いた英文の診断書、服用している薬の内容を英語に訳した書類等携えて、Tさんを交えて、カウンセリングを受けました。
結果から言うと、スキット先生の見解は、今まで僕が代理カウンセリングを受けてきた時と変わらない、皮弁法による陰茎形成手術は、ベストな選択ではないと言うことでした。
日本の主治医の先生は、確かに診断書に、”手術は可能な状態と思われる”と書いて下さっているけど、”手術によって、手指の血行を損なわないように、十分配慮する必要がある”と言う内容も書かれていると。
要するに、Tさんの場合、皮弁法による陰茎形成に伴う壊死と言うリスクは、形成された陰茎のみに起こり得るだけではなく、陰茎を形成するために、皮弁された側の手指の血行をも損ない、最悪場合は、手指を切断せざるを得ない事態を招くと言うリスクも否めないと。
また、スキット先生が、”手術は可能な状態と思われる”と言う言葉に期待を込めず、頑なにTさんの手術にノーと言い続ける理由は、皮弁法による陰茎形成を実行して、陰茎が壊死してしまった場合、その壊死を起こした陰茎を切断することにより、現在あるミニペニスすら、残らない状態にならざるを得ず、そうなってしまっては、あまりにも失うものが多すぎる、大きすぎると、こう心配して下さっているからでした。
こういったスキット先生の話を、直接伺い、特に前腕部皮弁での陰茎形成は視野に入れない方がいいと、より納得をして下さった様子のTさん。
しかし、なんとかならないかという強い思いがあることも事実で、スキット先生に思い切って、太腿部皮弁による陰茎形成のお話も伺ってみました。
確かにTさんの強皮症の症状は、脚部にはみられません。
しかしスキット先生は、こういった患者いるということを、他院で太腿部からの陰茎形成手術を手がけるご友人の医師(日本人にはあまり知られていない医療機関です)にまで相談をして下さっていた結果、たとえ症状がみられない部位だったとしても、その内部の目に見えない血管の状態が、決してベストな状態ではない可能性も十分あり得るため、Tさんにとっては、血管を接続したりする工程が基本的には必要ない、太腿部からの陰茎形成も、リスクが大きすぎるだろうという回答だったということでした。
では、陰茎形成が不可能なのであれば、せめて、閉じきれていない膣の完全閉鎖は可能かと、スキット先生に尋ねたところ、その部位を直接診察して頂けることになりました。
間もなくスキット先生は、Tさんが言う体液が出てくるという、閉じきられていない小さな膣口らしき穴を見つけました。
たった数ミリしかない、小さな小さな穴。
あまりにも穴が小さく、内視鏡を挿入して内部を確認することは不可能で、もし実際に切り開いても、どこまで閉じられていないのか等明確にはわかりにくく、手術は非常に困難を伴い、再度手を加えたところで、完全に閉じ切るということができる保証はないと。
Tさんの希望する内容が、一つ、そしてまた一つ、消去されていったカウンセリング。
最後にもう一つだけ、Tさんからスキット先生に、相談がありました。
せめて、ミニペニスの両脇に残っている大陰唇部分に、睾丸を形成することはできないかと。。。
これに対しては、スキット先生の見解は、その内容は決して難しくはないということでした。
ただし、形成する睾丸は、本来の男性のものとは形状と違うため、睾丸を形成したところで、外観がどれくらい整うかということは言い切れないということでした。

診察や触診を終えて、診察台から降りたTさんに、
”ミニペニス形成当時も、強皮症を患っていながらも、その後大きな問題もなく今に至るだけでも決して当たり前のことではないから、これ以上リスクを背負わなくてもいいのではないか”
と、Tさんのなんとかなるならと思い続けて止まない手術への気持ちを、宥めても下さいました。

わざわざ渡航したにも関わらず、スキット先生からの答えは、不本意にもTさんの意志に沿う内容ではありませんでしたが、30分強ものカウンセリング及び診察の時間を、Tさんに惜しみなく時間を費やして下さったスキット先生に、心から深く感謝致します。

皮弁法による陰茎形成手術。
この手術を受けたいと思っても、様々な事情から受けれない方がたくさんいます。
決して、手術代金さえあれば、誰でも受けれる手術ではありません。
要するにこの手術は、それだけシビアな内容であるということ。
よって、実際に手術に臨む方は、手術前に、医師から提示された条件等(減量や、日頃服用している薬の制限、タバコや飲酒等)は、無条件で厳守しなければならないということを、よりご理解頂きたく思います。

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